田んぼのカラス、森のカラス
田んぼソムリエ●林 鷹央
誰もが知っているカラス。皆さんの家の近くで聞こえるカラスの鳴き声は「カァ~」ですか? それとも「ガ~」ですか?
稲刈りが終わり秋から冬に向かう田んぼ。虫たちの鳴き声もやみ、少し寂しさを感じる季節です。
冬でも見られる生きものといえば鳥たちです。木の葉が落ちて、稲もなくなると鳥たちの姿がよく見えるようになります。田んぼの中をトコトコ歩いて餌を探しているのはハシボソガラス。見晴らしの良い草地を好み、田んぼはお気に入りの餌場です。こちらは「ガ~」としゃがれた声で鳴きます。
一方で街中でごみを荒らしたり、木々の多い公園でたむろしているのはハシブトガラス。こちらは「カァ~」とクリアな鳴き声です。もともとは森林のカラスなので地面に降りている時間が少なく、歩くのがうまくないため、時々ピョンピョンと跳ねます。ハシボソガラスよりやや大きく、くちばしが太く額が張り出ています。比較的見晴らしの悪い場所を好みます。
市街地近くの田んぼや公園、森や山が隣接した田んぼなどでは、ハシボソガラスとハシブトガラスの両方が見られます。両者の違いを見分けることができると、地理的条件と一致してくるので、風景を楽しむ上で役に立ちます。ぜひ覚えてみてくださいね!
田んぼを歩くハシボソガラス
樹上のハシブトガラス
田んぼソムリエ
林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。