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2023年1月30日 (月)

節分の恵方巻き

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美


 2月3日は節分。恵方巻きは、その年の縁起のいい方角を向いて、黙って食べると良いとされますが、食品ロスの代名詞になってしまっているのも事実です。
 恵方巻きの売れ残り処分費は、誰が払っていると思いますか? 店も負担してはいますが、私たちが納めた税金が使われている場合も多いのです。食品メーカーが出したごみは「産業廃棄物」としてメーカーが処理コストを負担しますが、コンビニエンスストアやスーパーで売れ残ったものは「事業系一般廃棄物」に区分され、多くの自治体では家庭ごみと一緒に焼却処分されます。その処理コストは自治体によって違いますが、東京都世田谷区では1kg当たり57円です。安くはない税金が、食べ物を燃やすためだけに使われるなんて、もったいないと思いませんか。
 私は2019年から、大学生インターンと一緒に、恵方巻きの売れ残りがどれくらいあるか数えてきました。19年2月3日、閉店間際のあるデパ地下へ行ったところ、5割引きで1000円の恵方巻きが272本残っていました。全国で捨てられる恵方巻きによる経済損額を概算で出したところ、16億円になりました。
 翌20年の節分では、すでに食品ロス削減推進法という法律が施行されていたため、企業による予約販売の導入や、納入数の調整により、19年より売れ残りが減りました。コロナ禍の21年には、時短営業もあり、さらに売れ残りは減りました。
 しかし22年には前年より売れ残りが増えていました。夜10時、コンビニのバックヤードから、大量の恵方巻きを出してきて、棚にぎっしり詰める店もありました。
 恵方巻きを構成している食材は、のり、米、卵、刺し身、青菜などです。どれも、本来、何かの命をいただいてできているものなのです。
 恵方巻きは命の結晶という思いで、節分の恵方巻きに向き合いたいものです。

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食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著作多数。