水神様、竜神様
田んぼソムリエ●林 鷹央
田んぼの生きものたちには水が必要です。水があるおかげで冬には水鳥が訪れ、サンショウウオやアカガエルが産卵に来ます。春になればミジンコが湧き、水生昆虫やトンボ、小魚たちの餌になります。いろいろな生きものが田んぼに集まり、そこで生まれ、食べ、旅立ち、命が循環しています。生きものが多様だと、さまざまな腸内を通ってきた「うんち」で栄養いっぱいの土ができるから、水田稲作は毎年お米が取れます。
でも外国へ行くと陸稲(おかぼ)といって、陸地でお米を作っている陸田にも出くわします。例えば、ラオスという東南アジアの陸稲を見てきたときの話です。なぜか陸稲の間にバナナの木が生えています。陸田では稲が栄養を1年で吸い取ってしまい、2年目は収穫量がガタッと減る連作障害が起きてしまいます。だから果実がなるまでに2年かかるバナナを間に植え、米→バナナ→米→バナナと収穫しているのだと。それを見て、水田ってすごいな! 日本は水も土も生きものも豊かなんだ! とあらためてありがたく思いました。だから昔から水源となる山や泉がある場所には水神様、竜神様という水にまつわる神様を祭って、大切に守ってきたのです。
ソーラーパネルは発電はしますが、命の水を蓄えることはできません。やはり山には木々や森林が必要ではないかと思ってしまいます。
陸稲とバナナが植えられた斜面(ラオス)
水源となる山の上に建てられた竜神様のほこら
田んぼソムリエ
林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。