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2017年6月 1日 (木)

麦秋とホタル

よこはま里山研究所NORA●吉武美保子・石田周一

 田植えがあちこちで行われ、小さな苗が揺れています。水面(みなも)に映る雲が間もなく梅雨入りであることを告げているようです。
 緑が濃くなるこの時期に、薄茶色の光景が広がる場所があります。丘の上の麦畑の昨年の秋にまいた麦たちです。稲と違って穂が垂れないので、芒(のぎ。小穂にある堅い毛のような突起)の一本一本に日が当たってとてもきれい。
 小麦と大麦を作っている農家で、大麦の収穫を体験させてもらいました。脱穀した大麦はもみを取るのが大変なので、芒だけを取って、丸ごといって麦茶に。焦がさないようにじっくり火を通して、出来たてをさらに煮出します。その間、香ばしく甘い香りが周りに漂っていました。子どもたちは、本物のストロー(麦わらは英語でstraw)で水を飲み、「麦茶の味がする!」と大はしゃぎ。
 麦茶を水筒にいただいて、宵の散歩に出ました。
 川沿いの田んぼはカエルたちの声でにぎやかです。7時半を過ぎると、小さな薄黄色の優しい灯が、そこここで見え始めました。ゲンジボタルのランデブーです。やがて同じリズムで点滅を繰り返すようになり、雄は高くゆらゆらと舞い、雌は水辺の草むらで雄を待ちます。
 ホタルは幼虫時代を水中で過ごし、きれいな水と餌になる巻き貝のいる環境が必要です。かつての水路は、生活排水や農薬などの影響でホタルや小魚もあまり見られなくなっていましたが、近年、多くの地域住民の努力によって復活しているそうです。
 人の営みに寄り添いながら暮らす小さな灯を見詰め、おいしい麦茶を味わう至福のひとときでした。田んぼや川をよりどころとする、たくさんの生き物の存在に気付かされました。

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よこはま里山研究所NORA…http://nora-yokohama.org/