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2017年7月

2017年7月 3日 (月)

野菜と健康

佐久総合病院名誉院長●松島松翠

 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病があるにもかかわらず、これらを放っておくと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気を引き起こす危険があります。これらを防ぐために、食生活の面で重要な鍵となるのが「野菜」の取り方です。
 野菜を取ることが、体にどんな良い点をもたらすのでしょうか。
 一つは、たっぷり取っても摂取エネルギー量が低いということです。野菜は、ほとんどが低エネルギー食品で、たくさん食べても摂取エネルギー量が抑えられるので、肥満を防ぐのに大いに役立ちます。
 二つは、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれるということです。ビタミンAやビタミンC、カリウム、鉄など、野菜には、さまざまなビタミンやミネラルが豊富に含まれます。これらは、エネルギーを作り出したり、消費したり、体内の細胞を新しくしたりする働きを助けます。
 ビタミンやミネラルが不足すると、体の調子が悪くなり、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病につながる恐れがあります。
 三つは、食物繊維が豊富に含まれることです。
 食物繊維は、がん予防効果があります。米国や欧州での疫学研究によると、特に口腔(こうくう)がん、肺がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、直腸がんの予防に有効であるという結果が出ています。
 野菜といっても多くの種類がありますし、含まれている成分もいろいろですから、できるだけ多くの種類を混ぜて取るのが効果的です。野菜は、全体として1日に350g取ることが必要です。
 高血圧の人は、1日の塩分量を6g未満にすることが推奨されています。また体内の余分な塩分を排出させて、血圧を下げる働きのあるカリウムを取るのもお勧めです。カリウムは、エダマメやホウレンソウなどの野菜に豊富に含まれます。

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夏バテのビタミン不足に胚芽米

管理栄養士・雑穀料理家●柴田真希

 暑い日々が続くと「そうめんやそばなど冷たい麺類に麺つゆだけ」というような食事になりがちです。短時間で作れて、食欲がないときでも食べられる麺類にはついつい手が伸びてしまいますが、このような食事を続けていると、タンパク質やビタミン・ミネラルが不足しがちになり、疲れやすくなったり夏バテの原因になったりします。
 そんなときにもご飯がお薦めですが「暑くて台所にあまり立ちたくない」「もっと効率良く栄養を取りたい」。そんな人にお薦めなのが「胚芽米」です。白米より健康に良いことはなんとなくご存じの方もいらっしゃると思いますが、玄米や白米との違いは何なのでしょうか。
 まず、玄米とはもみ米からもみ殻を除いた精白していないお米のことです。白米に比べて夏バテ時に補給したいビタミンB1は5・1倍、抗酸化作用のあるビタミンEは12・0倍も含まれています。
 それに比べて胚芽米(胚芽精米)は、ぬか層のうち胚芽だけを選択的に残して、他を除いた物で胚芽保有率80%以上の物をいいます。白米に比べてビタミンB1は2・9倍、ビタミンEは9・0倍と玄米には劣りますが、大切なのは消化と吸収です。
 食物繊維も豊富な玄米は、不足しがちな栄養が取れるというメリットはありますが、しっかり消化できるように炊くのに時間がかかったり、お子さんや高齢者、胃腸の弱い方や夏で弱っているときには適さないこともあります。
 調理方法や食感が白米に近い胚芽米は、夏でも無理なく栄養が補給できるのです。
 夏は汗などでビタミン・ミネラルが不足しがちになります。しっかりと栄養のあるお米で補給していきましょう。

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■白米と比べた栄養価
玄米 胚芽米
ビタミンB1 5.1倍 2.9倍
ビタミンB2 2.0倍 1.5倍
ビタミンE 12.0倍 9.0倍
マグネシウム 4.8倍 2.2倍
食物繊維 6.0倍 2.6倍
『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』より計算


柴田真希(しばたまき) 株式会社エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。管理栄養士、雑穀料理家、フードスペシャリスト、1級惣菜管理士、健康食育シニアマスター、漢方養生指導士(漢方スタイリスト)。著書に『女子栄養大学の雑穀レシピ』(PHP出版)『おなかやせ定食』(主婦の友社)などがある。