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2022年7月28日 (木)

蜂蜜

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 8月3日は「はちみつの日」。
 蜂蜜は、ミツバチが花の蜜を集め、巣で加工・貯蔵したものです。
 ミツバチは、一生かかって一生懸命働いて、スプーン(小さじ)1杯分程度の蜂蜜を集めます。たった5gの蜂蜜が、ミツバチにとっての一生分の仕事の結晶なのです。
 ミツバチが私たちに提供してくれるのは、蜂蜜だけではありません。世界の主要農産物のうち、およそ75%は蜂の授粉に依存しています。その経済的価値は全世界で約1530億ユーロ(約21兆円。2015年時点)、日本では4700億円(2013年時点)に達するそうです。
 それほど、私たちの食と農に貢献してくれるミツバチが、世界的に減少しています。生物多様性の研究を行っているIPBESという組織によると、世界では100万種類もの動植物が絶滅の方向に進んでおり、中でも蜂の減少は深刻とのこと。
 蜂蜜をテーマにしたドキュメンタリー映画『ハニーランド 永遠の谷』は、アカデミー賞2部門に同時ノミネートされました。欧州で最後の自然養蜂家の女性が主人公です。彼女は、採れた蜂蜜のうち、半分は自分がもらい、半分はミツバチに返します。でも、突如現れた隣人は、蜂の巣を根こそぎ奪い取り、彼女の収入源は途絶えてしまいます。
 このことは、われわれが経済を循環することができるのは、自然環境あってこそであることを示しています。今関心が高まっているSDGs(持続可能な開発目標)の考え方としてSDGsウエディングケーキモデルがあります。最も大切な土台に環境、その上に社会、経済があります。経済の発展は社会の条件により成り立ち、社会は生物圏によって支えられていることを示しています。自然環境の恵みがあってこそ、経済を循環させることができているのです。自然と環境への敬意を忘れないようにしたいものです。

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食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著作多数。