バナナ
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
バナナの加工に携わるバーナナ社のマット・クリフォード氏によれば、世界で年間約1500億本流通しているバナナのうち、およそ半分に当たる750億本が捨てられているそうです。要因の一つが、バナナのシュガースポットです。バナナは熟すと、皮が茶や黒に変色します。これを「シュガースポット」と呼びます。シュガースポットが出たバナナは甘味や香りが強く、抗酸化成分であるポリフェノールも増えています。見栄えが良くないという理由で値引きして売られますが、それでも売り切れずに残り、捨てられてしまうのです。
私は野菜と果物のスムージーを2012年からほぼ毎朝作っています。スムージーの本の監修を依頼されたのがきっかけです。シュガースポットが出ていて半額に値引きされたバナナを買ってきて、しばらく部屋で熟成させます。そして、皮をむいて冷凍してスムージーに入れると、とてもおいしくなります。
バナナが役に立つのは実だけではありません。私がJICA(国際協力機構)海外協力隊で活動していたフィリピンでは、バナナの葉っぱを食品包装やお皿の代わりに使っていました。例えばキャッサバという芋で作った、もちもちしておいしいキャッサバケーキは、バナナの葉にくるまれて市場で売られていました。
バナナの茎を生かす試みもあります。ワンプラネット・カフェのエクベリ聡子さんとペオ・エクベリさんは、アフリカのザンビアで取れるバナナの茎を使い、日本の和紙の技術と組み合わせて、バナナペーパーを開発しました。一般的な紙だと木を伐採して作りますが、木は、いったん切ると、育つまでに何年もかかります。でも、バナナは1年で育ちますので、今まで捨てられていた、その茎を使うのです。バナナペーパーは、日本でも包装紙や表彰状などに使われているんですよ。
図:バナナのシュガースポット(著者撮影)
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著作多数。