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2023年3月30日 (木)

大切なものは見慣れた風景の中に!

田んぼソムリエ●林 鷹央


 日本の風景といえば何を思い浮かべますか? 海外の人なら浮世絵の富士山や、日本をぐるりと取り巻いている海の風景かもしれません。でも、見慣れた日常生活の中で人々が日本らしさを感じるのは、四季折々の田んぼを中心とした「里山の風景」でしょう。春に田植えの準備が始まる頃、田んぼの周りでは小さな草花が咲き、虫も出てきて里山がにぎわい始めます。
 もともとはヨシに覆われた湿地を、先祖たちが田んぼに作り変えてきました。毎年手入れをしないとすぐにヨシが生えてしまうので、農作業を続けることで維持されている風景なのです。しかし最近は若い人たちが都会に出て行ってしまい、田んぼの手入れをする人が減ってしまいました。放置され荒れてやぶになったり、山の斜面や田んぼにメガソーラーパネルを設置してしまったりと「里山の風景」が失われてきています。
 世界の人口が増え続け、やがて食料や肥料などの資源の輸入は難しくなります。田んぼは日本人の主食である米を作ります。山には肥料になる落ち葉や、建築資材、薪炭材(しんたんざい=まきや炭などの燃料用として使用する木材)という資源が眠っています。森林の木々は田んぼに来る水を蓄えてくれています。私たちが見慣れた風景の中に、本当に大切なものがあります!


田植え前の棚田風景

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田んぼソムリエ
林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。