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2016年9月29日 (木)

肉のおいしさを引き出す熟成

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日本獣医生命科学大学応用生命科学部教授●西村敏英

 牛・豚・鶏の肉は、精肉店やスーパーの食肉売り場などの店頭に並ぶ前に、肉質が柔らかく味や香りが向上するように、一定期間低温で貯蔵されています。このように肉を一定期間貯蔵して肉質を改善することを「熟成」といいます。熟成することで食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)としての価値が高くなります。一般的な熟成期間は、真空包装せずに4度で貯蔵した場合、牛肉で2週間、豚肉で5~7日、鶏肉で1~2日です。
 加熱調理されたおいしい肉は、それぞれの肉に特徴的な味わいが強く感じられます。また、肉質が柔らかく、かんだときに肉汁が口いっぱいにあふれ出て、肉独特の複雑な味を感じると同時に、好ましい香りが強く広がります。肉の特徴的な味わいを強く感じるには、脂肪とうま味成分のグルタミン酸やイノシン酸が重要な役割を果たしています。うま味物質は、熟成によって増加することも分かっています。
 最近、低温熟成させた和牛を提供するレストランや、熟成肉やエイジングビーフと表示された牛肉がスーパーの食肉売り場でも販売されています。エイジングとは熟成のことですが、熟成方法はドライエイジングとウエットエイジングの2種類あり、どちらも時間をかけて肉の味わいが強くなるのを待ちます。ドライエイジングは、骨付きの大きな部位のまま、温度1~3度、湿度60~80%で肉の周りの空気が動く状態をつくり、20日~2カ月も寝かせます。
 一方ウエットエイジングは、肉の乾きを抑えるように布で巻いたり、真空パックなどのまま、0~2度の低温で15~25日程度寝かせます。
 熟成によって、柔らかくなり、うま味物質が増えると、加熱した肉の香りの広がりが大きくなりますが、肉のおいしさは、よくかんで、口いっぱいに肉汁が広がると、よく分かります。硬い肉を敬遠しがちな高齢者に、柔らかく、うま味物質が増えた熟成肉はお薦めです。

西村 敏英(にしむら としひで) 農学博士。著書に『最新畜産物利用学』『食品の保健機能と生理学』などがある。 2003年日本家禽学会技術賞受賞、2004年日本農芸化学会英文誌優秀論文賞受賞。

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