« 2016年11月 | メイン | 2017年1月 »

2016年12月

2016年12月27日 (火)

スノーアップル

一般財団法人日本気象協会●檜山靖洋

 冬の日本海側は、世界の中でも雪の量が多い地域です。冬の間、農作業ができない地域もあります。でも、雪がたくさん積もっていることを逆手に取った農産物もあります。
 リンゴの生産が盛んな長野県の菅平では、11月から4月にかけて雪が降りやすく、1m以上の雪が積もることもあります。その菅平では、秋に収穫したリンゴを雪の中で保存し、春に販売するものがあります。その名もスノーアップルです。雪の中は温度が0度から1度くらい、湿度は90%に保たれます。温度0度くらいでもリンゴは凍ることはありません。冷蔵庫に保存するよりも、みずみずしさが保たれ、甘味も濃くなるということです。
 「雪下にんじん」など、雪の下で甘味を増す農作物は他にもあります。電気も使わず、エコな保存方法で、春にもおいしい果物や野菜が食べられたらいいですね。

P34_12otenki_4c

混植~手軽にできる有機ベランダ栽培

明治大学特任教授●佐倉朗夫

 ベランダ栽培では一つのコンテナに1種類の野菜を栽培することが多いのですが、自然界では、1種類の植物だけで生育していることはまれです。本来はいろいろな植物が混ざり合って存在し、互いが生存できる安定した生態系を作り出しています(食ったり食われたり、栄養分を与えたりもらったり、あまたの競争、寄生、共生の中でバランスが取れている)。それに対してコンテナ栽培は多様性が著しく低いため、バランスが崩れやすく不安定な系になります。そこで、同じコンテナに異なる作物を同時に作付ける(混植)と、土壌微生物も多様になり、天敵も増え、病害虫が抑えられて安定性が増します。
 限られた狭い空間なので、栄養分や日照の競合がなるべく起こらない組み合わせが大切です。草丈の高低、吸収する養分の多少、養分の好み、発生する病害虫の種類などを考慮します。さらに天敵を増やす作物(オクラや麦など)、植物や微生物が特殊な物質を放出し周辺の生物に影響を与える現象(アレロパシー)などの利用も有効です。
 トマトとニラ、キュウリと長ネギの混植では、それぞれの根が絡むように近くに植えると、トマト(萎凋病)、キュウリ(つる割病)の土壌病害を防ぐ効果があります。この他にも、葉ネギがホウレンソウの萎凋病、長ネギがイチゴの萎黄病を抑制することも知られています。さらに、根粒菌が根に共生するマメ科の野菜との混植は、窒素が供給されて生育を助けてくれます。例えば、トマト、ナスにはラッカセイ、ニンジンにはエダマメなどがよく利用されます。
 混植では相性の悪い組み合わせもあります。「ダイコンとレタスとイチゴはニラと駄目」、「トマトとナスはジャガイモやトウモロコシと駄目」、「キュウリとスイカはインゲンマメと駄目」と覚えておきましょう。


P24_12veranda_4c


乳がんの早期発見と治療

佐久総合病院名誉院長●松島松翠

 乳がんは、肺がんや食道がんなど他のがんに比べると進行が比較的遅い場合が多く、早期のうちに発見できれば治る可能性が高いがんです。そのため診察や検査をきちんと受けることが、まずは大切です。
 医師にかかるとまず第1に「視触診」が行われます。これは、しこりの有無、しこりがあれば、その位置、大きさ、数などを調べます。また脇の下のリンパ節が腫れていないか、乳頭からの分泌物がないかどうかを調べます。
 第2は「マンモグラフィー」という検査です。乳房のX線検査です。乳房を上下、左右から挟んで平らにし、エックス線撮影を行います。がんは白く写ります。ただし、乳腺も白く写るため、乳腺の豊富な若い女性の乳房では、がんが正常な乳腺に隠れて見えないこともあります。
 第3は、超音波を利用した「画像検査」です。乳腺は白く、がんは黒く映し出されます。若い女性では放射線の被ばくを受けないので、適した検査といえるでしょう。
 第2、第3の方法は、集団検診でもよく使われている方法ですが、さらにがんの広がりや転移などの有無を調べるために、CTやMRIなどの検査も行われます。
 治療としては、第1には「手術療法」があります。それにも部分的に切除する「乳房温存術」と、乳房を全て切除する「乳房切除術」とがあります。それぞれの病状と患者さんの希望によって異なります。
 その他、乳がんの術後の薬物療法として、ホルモン療法、分子標的療法、化学療法の三つがあります。乳がん再発予防が目的ですが、最近出た新しい薬もありますので、医師とよく相談してから、使ってください。


P28_12kenko_4c